10代の頃、住んでいたマンションの屋上から地面と睨めっこをしたことがあります。
以前公演した『マインドファクトリー〜丸める物たち〜』という作品で最後主人公が階段を登る抽象的な心象表現のシーンで終わりますが、あのあと僕は屋上へ登ることになります。
そしてあと1.5歩前に進めば人生終われてしまう環境で2時間死ぬことへ向き合いました。
1歩ではなく半歩分だけ謎の保険をかけている時点でまぁ無理なんだろうなと想像させますが、当然地面にダイブすることはありませんでした。
その後、母の作ったご飯を食べ、マンションの共同使用できる温泉に浸かり、寝れぬ夜を過ごす的なことで終わったのを覚えています。
そのあとも何度か「あの時、死ねる最大のチャンスだったのでは?」と思える出来事を何発か遭遇しながらもまだまだ元気に生きています。『最近の悩みは痩せられないこと』くらいには落ち着いています。そして最近痩せました。8kg。見違えるようです。
当時から僕は自殺に関してはある考え方を持っており、これまでもずっと揺るがないものでした。
僕の周りでは、親しい友人や知り合いなど出会った多くの方が自殺しています。
年齢を重ねれば重ねるほど、近しい方が亡くなってしまう可能性は高くなりますが、20代前半から知り合いの自殺の報告を受けることが多かったのです。
しかし、死を悼む友人たちを見て、その感情に共感しきれないことに気がつきました。
もちろん悲しみもあるし、突然この世に存在しなくなってしまったことに喪失感などもあるのですが、でもでも、支配してくる感情はもっと別のもので自分はそこにいてはいけないのかもしれないと。
そして最近、揺るがなかったはずの自殺に対してこの考えが大きく変化したきっかけがあったのです。
『人が生まれてきて自ら命を絶つ』
この混沌とした日常で、自殺と死について改めて考え直せるような作品にしたいと思っています。
作・演出:池内風