この作品には年若き男女が多く登場します。
こうした中で若い方で強烈な個性と才能を持った方々と一緒に創作したいと思ったところから立ち上がっていった作品でした。
ストレスシリーズ『とりあって』(テーマ:ハラスメント)『悼むば尊し』(テーマ:いじめと自殺)『空腹』(テーマ:貧困)のような社会構造の中で犠牲になる人々を描いたある種の社会性はありません。
が、しかし、改めて台本を読み進めていくと、悲しみの象徴のようなある人物に対して『強烈な憐れみ』を引いた立場(客席)から見て笑えていた初演時と比べて、今の自分達の社会背景と見比べると、確実にその人物の生活と精神構造の距離が近くなっており『切実な問題』として迫ってくる感覚を得て「むしろ、こんなの普通じゃない?」と思えてくる不思議な感覚に陥りました。
初演時は2018年。そこから6年経ち、その間にはコロナがあり、増税増税の嵐で一般的な庶民からしたら生活は苦しくなる一方です。そんな世の中で這い上がろうとする若者と、早々に諦めていく若者の二分化が進んでいるように感じます。
今回の作品は、非常にバカバカしく、下ネタを含む『若者たちの性』に対する話も多く、喜劇的な話であり、重苦しいものではありません。過去三回の公演は『ストレス耐性に自信がない方にはおすすめしない』とトリガーアラートを出しましたが、今回は『ストレス耐性に自信がない方にもおすすめ』です。
しかし、作品はその時代の流れと生活によって印象を変えるというのをいつも感じておりますが、ものすごく時代に影響を受ける作品なんだと気付かされました。
それでも圧倒的なバカバカしさが勝つ気がしますが、当時とは全然反応が違うのではと思っております。
欲がだだ漏れ、漏れ出た欲に自ら溺れ、のたうち回りながらも仲間に助けを求めるが、他人を思いやる余裕はなく互いを傷つけ合い、傷つけたことに自分が傷つき、人生を悲観する。そんな若者たちがぶつかり合うとある一晩の物語です。
笑っていながらも、気がつけば無数の棘が心に刺さっている。そんなお芝居にしていければと思います。
かわいいコンビニ店員飯田さん 池内風